「撮る人」を撮るということ。
映像撮影/編集を生業とするようになって、もうすぐ丸3年が経ちます。2018年に独立して以降、写真撮影や人材育成コンサルティングで生計を立てていた私からすると、新しい世界に飛び込むという新鮮さで、コロナ禍で仕事がぶっ飛び続けるなかでも、本当に興奮していたなぁ、と記憶しております。
まだまだ発展途上ですが、この3年間で色んな方々を撮影させて頂きました。そのなかで「撮る人を撮る」ということは、偶然ありませんでした。写真家の感性をうまく映像におさめることができるか、という一抹の不安を抱えながらも、お声がけさせて頂きました写真家の方とのコラボ撮影をBTSとして記録に残していこうと思います。と、いっても今回は映像なしの文章BTSです。
撮影前
先に完成した映像を紹介しちゃいます。
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今回被写体となっていただいたのは、
タケアツさんこと、武本淳美(タケモト アツミ)さん。
http://atsumitakemoto.com/
https://www.instagram.com/takeatsu_photo/
撮影までに2度お会いして、撮影に関する打ち合わせや今までの生い立ちなどを共有しました。
この時間が本当に必要。大事。
SNSで一方的にフォローしていたので、初めまして!からのスタートでした。でも、タケアツさんのコテコテの関西弁と底抜けの明るさで、5分後には打ち解けていたような。こういうところも表現者として培ってきた武器なんだなと感じます。
渋谷で写真を撮り続けてきた、まさにストリートファイター。そんなタケアツさんを映像でどう表現するか。お酒を飲みながら、質問を重ねていくうちに見えてくるカタチがありました。何かを紐解いていく過程の言葉遊び、対話がたまらなく好き。(ここも本来BTSとして、録画すべきとこやった。反省。笑)
今回の映像のテーマは
「なぜ撮ることを辞めないのか」に決定。
写真家の素顔をどこまで捉えきれるか、に尽きるんですが、撮られているということをいかに意識させずに、その横顔を切り取れるか。なんです。私自身もカメラを構えますが、できるかぎり黒子に徹する。そして、いかにタケアツワールドの住人として自然体で立てるかが鍵になると考えていました。
なーんて書くとめっちゃ格好はいいですが、同じ撮影者としてどう被写体に向き合うのかを間近で見ることができる!っていう興奮でいっぱいでした。そんな私自身の好奇心も映像に反映できれば…とも考えていました。撮影日までのドキドキが、またなんとも言えないんすよね。
撮影の1週間ほど前に、撮影予定時間と同じ時間帯にロケハン。実際に構えるのは写真機としてのカメラのみで、基本このときは映像は撮りません。
どんな人が歩いているかをよく観察する。
背景として使えそうな建物や、差し込む光の強さ/柔らかさなどを確認しつつ、ここでカメラを構えている自分をやーんわり想像しながら、散歩する。そんな時間を一人で静かに過ごします。
撮影中
そして、撮影当日。
集合時間より1時間ほど早く行き、ロケ地となる渋谷・道玄坂周辺のインサート撮り。
インサート撮影…映像の間に差し込むカットを撮影することで、今回で言えば渋谷の風景映像のことです。
完成の予定尺(今回で言えば少なくとも5分以内かな、という程度)に合わせて、どれぐらいの撮影と素材があれば十分か、ということを逆算して撮影をしていきます。
そして、タケアツさんと合流し、撮影スタート!
なんて楽しそうに撮るんだ!が第一印象でした。道行く人にガンガン声をかけては、シャッターを切り、撮影というよりは偶然の出会い/時間そのものと遊んでいるように見えました。
私の海外での撮影スタイルと被るところがありましたが、警戒心がめちゃ強い日本でグイグイ突き進む後ろ姿がまあ勇ましく。
かっこよかったですね、タケアツさん。視線をあちこちに飛ばしているかと思いきや、立ち止まってジーッと何かを見つめる。その姿は好奇心旺盛な子どものようで…そして、被写体を観察しては、サッとカメラを構えて足早に移動し自由に飛ぶ姿は、ストリートファイターというより「踊る写真家」でした。
私も心地いい緊張感のせいか、深く息を吸って止めたまま撮影してしまう時間がありました。モニター越しにではありましたが、それぐらい目を見張る瞬間の連続でした。
タケアツさんと合流してから約2時間ほどで撮影は終了。渋谷でのストリートスナップを覗かせて頂いたわけなんですが、自分がたどり着けそうでたどり着けなかった未知の世界観を見せて頂いた気がしました。
撮影に対する価値観やスタイルは本当に人それぞれです。それでいいと思います。1つ間違いなく言えるのは、タケアツさんの撮影姿を撮ることはとても楽しかったということ。一期一会に賭けてきた気概に触れ、不思議な浮遊感を残しつつ、渋谷スクランブル交差点で撮影を終了し、解散しました。
撮影後
撮影後、渋谷の片隅で疲労で15分ほど動けなかった私。
思い描いていた撮影ができた感触はありましたが、当日撮影するまで何が起こるかわからない世界。
まさにハプニングのなかでの撮影になることはわかっていたので、正直に言います。かなり緊張はしていました。笑 でも本当に楽しかったから、その余韻に浸りたく渋谷を離れられなかった。という表現の方がしっくりきます。
編集期間はだいたい1か月ぐらいだったと思いますが、撮影素材のチェックをしてから、再度構成を練り直し、組み立てては壊し、組み立てては壊しの繰り返しでした。
撮影現場の温度や偶然の出会いに身をゆだねるような撮影は、こんなループに陥りがちなんですが、これはある意味感謝すべきことなんです。構成に迷うほど素材が豊富で、色んな見せ方が浮かんでしまうことは、編集者泣かせではあるんですが、幸せなことだなぁと私は感じます。案の定、撮影はもちろんのこと、それはそれは楽しい編集期間でした。
編集完了後、ブログとして記録に残すべく再度お声がけしたところ、快くご感想文を書いて頂けました…。
感無量です。こういうお言葉を頂けて、「あぁ、しっかり通じ合えてた。よかった。」と胸をなでおろすような気分になりました。それと同時に、僕の性格や気質をしっかり見抜かれてる…と、少し恥ずかしい気もします。笑
以下、全文です。ぜひご覧ください♪
撮影前からかなりお心遣いいただき、私より私としっかり向き合ってくださっているような
不思議な感覚を味わいました。
川崎さんは、噛めば噛むほどに、天真爛漫さや無邪気さや神経質なのやら大雑把なのやら、色々な旨味をお持ちの方だなと感じ、それが楽しい準備期間でした。
結果、試しにどっぷり全部任せて川崎さんの船に乗せてもらって、前より強くなれた気がしています。
自分をしっかりと持ち、強い根を張っていらっしゃる方だったので、安心して全部任せられて楽しい本番でしたね。
撮影当日の無邪気な笑顔の川崎さんの残像が、今でも右脳に焼き付いています。
ヒトを撮ったり、組み立てていくプロセスがほんまに大好きな方なんだなぁと感じました。
私にとって、
喜怒哀楽を感じさせてくれるのが「道」
悔しいをたくさん経験したのも「道」
リベンジできる場所もまた「道」しかないんだなと思っています。
常に「現在」の自分を超えて生きたい。
撮影後は、自分をもっと好きになれたし、今まで感じたことのない「欲」のようなものが自分の中に生まれてきたなと感じています。(争い事が苦手な平和主義者には珍しく…)
10年近く道を撮ってきて、ご褒美のようなコノ度の撮影。続けてて良かったなぁと実感しました。
そういえば、急に思い出したのですが、先日の撮影でお見せ出来なかった品がありまして、尊敬する写真家から頂いた言葉です。
未だ見ぬ「続けた先の景色」が見てみたいとずっと思っています。だからストリートスナップは辞めたくないのです。
実感が得られるか、得られぬまま朽ちていくか。人生は意外と短く、いつどうなるかわからない。
身体は老いていくけど、魂は老いないと信じているので、常に初心であるこの気持ちは忘れずに、1日1日を大切に。
今迄はオンリーワンで良いやとゆるゆる生きておりましたが、誰か1人のナンバーワンになれるよう、もう少しチカラ強く前進していこう、もっと頑張ろうと思うようになってますね現在。
改めまして、川崎さん、3年前のパンデミック中の撮影で「不謹慎」などと言われたり、蹴られたりしたトラウマから解放する機会を与えてくださったこと、しっかりとストリートに戻るキッカケをくださったこと、数ある写真家の中から私を選んでくださったこと、写真はモノクロだけど、色々感謝はカラフルで溢れています。ありがとうございました!
こういう文章、グッときます…。泣ける。
本当に楽しい撮影をこちらこそ、ありがとうございました!
それまでお互い腕を磨きに磨いて、次回も楽しいコラボしましょうね!!!
以上、写真家 武本淳美さんとのBTSでした!
あぁ、なんて楽しそうな顔だこと。©Atsumi Takemoto